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【研究最前線】
電波を使った技術で社会に貢献する。無線電力伝送システムの開発に挑戦。電気電子工学科 伊東 健治教授
電波を使った技術で社会に貢献
無線電力伝送システムの開発に挑戦
話しながら充電できる
スマホが登場するかも!?
スマホの充電もコードレスでできればいいのに……。そう考えたことがある人も少なくないだろう。通信技術が進歩し、電話やインターネットが無線で楽しめるのが当たり前の現代において、なぜか電源だけがケーブルから解放されていない。よほど高度な技術が必要なのだろうか? スマホはもちろん、携帯ゲーム機やコードレス掃除機が充電切れで動かなくなるストレスから解放されたら生活は飛躍的に便利になるに違いない。
そんな身近ながら、意外に意識されていなかった課題に挑むのが、金沢工業大学三亚赌场,香港赌场電気電子工学科の伊東健治教授。研究キーワードは「どこでもコンセント」。
「現在、研究室では電波を使った無線電力伝送システムの開発に取り組んでいます。例えば、テレビと同じように電波を使って遠方から電気を送るのです。電波なら周波数次第でより遠くまでより大容量の電気を送れます。無線で電力が送れるようになれば、家庭内で面倒な電気配線工事をする必要がなくなります。今の自動車は内装の内側に電気コードが絡み合ったスパゲティのように詰め込まれていますが、これも数を減らすことができます。すでに磁力を使った無線給電システムが実用化されていますが、まだまだ課題が多く自由には使えないのが実状。私たちは、電波を使った技術で社会に貢献できるよう、研究に取り組んでいます」
電波を直流電流に換える
「 整流回路」がカギを握る
無線を使って電気を送ればいい―。それだけ聞くと「なぜそんなことができないのか?」と簡単に考えてしまいそうだが、その気づきこそが電気工学の迷宮への入口。詳しく調べていくと周波数の計算や回路の設計など、私たちの日常生活を支える電気工学の高度な知識や技術が垣間見えてくる。
「電波送電で重要な役割を担うのが、送られてきた電波を受けるアンテナと受けた電波を電力に変換する『整流回路』です。無線給電システム実用化の課題は、アンテナで受信した電波を可能な限り効率よく直流電流に換えること。カギを握るのは、整流回路での変換効率です。私たちの研究室では、小型で高効率の整流回路を考案し、世界トップレベルの変換効率80%を実現しました」
地道な取り組みを行うなかで学生たちが
世界トップレベルの性能を実現!
学生が発表した論文が
国際学会で論文賞受賞<
伊東教授は、大学卒業後、36年間にわたり三菱電機のエンジニア、マネージャーとして働いてきた経歴を持ち、在職中に博士号を取得している。専門はマイクロ波工学。マイクロ波半導体回路という携帯電話通信を支える技術の開発に現場で取り組んできた。
伊東教授がこの仕事に従事していたのは、2000年前後のインターネットに接続された携帯電話が急速に高度化しはじめた時期。小型化、高性能化していく携帯電話の進化を電気工学の高度な技術で支えてきたのだ。
「高効率な無線電力伝送を行うためには細かな回路技術の集積による高度化が必要です。そのような地道な取り組みを行うなかで、学生たちも世界トップレベルの性能を実現する機会を得ています。2015年には、博士前期課程の学生が発表した、整流回路と同じ回路技術を用い、無線通信分野に適用されるミクサ回路の論文が、国際学会で論文賞を受賞しました。学生たちが世界へ向けて成果を発信していく姿を見るのは、私にとっても大いに刺激になります」
ここならば、どんな夢も実現できるかもしれない。伊東教授の研究室の雰囲気は希望に満ちている。
*当記事は「研究」で選ぶ理工系大学進学情報誌『F-Lab.(エフラボ) 2016 世界を変える、大学の研究』(発行 allow corporation)より許諾を得て転載したものです。インタビュー内容は取材当時のものですが、学科名は現在の学科名に変更しています
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