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【研究最前線】
世界でまだ誰も成し得ていない技術開発に挑戦し続ける。
機械工学科 森本喜隆教授
ナノメートル(100万分の1mm)の単位で工作機械を制御する
加工が困難な非軸対称の
三次元カムの量産化を実現
精巧な日本のものづくりを支えている工作機械。日本の工作機械は、高品質で使いやすいと高く評価されており、ドイツと世界トップの座を争っている。当然、研究レベルも高い。キーパーソンのひとりが、金沢工業大学三亚赌场,香港赌场機械工学科の森本喜隆教授である。
「私のポリシーは、オリジナルの発想で、世界初の技術の開発にチャレンジすることです」
森本教授は、すでに10以上の特許を取得しており、オリジナリティーあふれる研究に取り組んでいることが証明されている。誰も成し得なかったことに挑戦しようという姿勢は、研究室の学生にも浸透。やりがいを感じて、研究に没頭する学生たちで、研究室は活気に満ちている。その中には、世界初の5軸3Dプリンタ(従来は3軸が一般的)を開発した学生もいる。
研究テーマの中で、とくに独自性が高いものの1つが「非軸対称三次元曲面旋削?研磨加工システム」の開発である。
「自動車のエンジンで、吸排気バルブの開閉を行っているのがカムという部品です。近年、燃費向上などに有効な三次元カムが注目されていますが、量産が困難なことが課題になっていました。左右対称の丸い材料と異なり、非円形?非軸対称形状の三次元カムの加工は難しいとされていたのです。そこで、私が開発したのが、5ナノメートル単位で、削る位置を制御する工作機械『NACS-Turning』です」
ナノメートル(100万分の1mm)レベルまで追求したことによって、従来の方法では、三次元カムを1個つくるのに1時間近く要していたが、「NACS-Turning」ではわずか30秒にまで短縮している。自動車部品業界にとって画期的な成果であり、2015年度の日本機械学会賞(論文)を受賞した。
世界でまだ誰も成し得ていない技術の開発にチャレンジし続ける
省スペース化を図るための
デスクトップ工作機械を開発
また、省スペース化を実現する小形工作機械の開発も、業界からの注目度が高い。
「デンソーでは、『n分の1システム』という方針を打ち出しています。例えば、工作機械の大きさが2分の1になれば、工場の同じスペースに2倍の工作機械を設置することができ、生産性が向上するというわけです。確かに、これまでは、小さな部品を作るのに、きわめて大きな工作機械が使用されている場合が少なくありませんでした。私が開発したのは、従来の鋳物の代わりに、CFRP(炭素繊維)を素材とするパイプフレーム構造を採用した工作機械です。大幅な小形化、軽量化を実現しています」
この研究は現在、デスクトップ型の工作機械が完成するまでに進化している。
もちろん、小形で軽量になったために、振動や熱変形などが制御しにくくなったのでは、生産現場では使えない。森本教授は、この問題に対応するために、振動と熱変形の制御を検証する「パイプ構造CNC旋盤」も開発した。
そのほか、社会との連携にも力を入れている。実は、北陸3県には、工作機械メーカーが多く、世界ナンバーワン、オンリーワンの技術を持つ企業も少なくない。そうした工作機械メーカーの若手エンジニアを育成するための勉強会などが開催されている。企業との共同研究も活発だ。
「世界トップレベルの企業の方々と交流することで、最新、最先端の動向を踏まえた研究を進めることができるメリットは大きいと考えています。産業界の方々と交流する中で、新たなアイデアが浮かぶこともよくあります。しかも、私の研究は、理論を構築して終わりではなく、その理論を証明するために、機械を実際に製作します。必然的に、メーカーの協力を得ることが重要になるわけです」
世界にインパクトを与える
「夢の主軸」の開発を目指す
さらに森本教授の「世界初の技術」へのチャレンジは続く。
「今年9月に特許を申請した段階ですので、詳細はマル秘なのですが、『夢の主軸』の開発を目指します。東大、諏訪東京理科大の研究者や、企業とも連携し、世界に圧倒的なインパクトを与えようという意気込みで取り組んでいきます」
これまで斬新な発想のもとに、数多くの研究成果をあげてきただけに、その言葉は力強い。
*当記事は「研究」で選ぶ理工系大学進学情報誌『F-Lab.(エフラボ) 2019 世界を変える、大学の研究』(発行 allow corporation)より許諾を得て転載したものです。
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