専任教員インタビュー集

市村 直也
Naoya ICHIMURA
教授/弁護士
休日には「空を飛ぶ」弁護士
眠くはさせない双方向の講義で、著作権を学ぼう
市村直也

大胆な趣味に挑戦するアクティブな法律家

著作権が専門の弁護士であり、大学院の教授も務める人物―。そう聞いたとき、どんな人柄を連想するでしょうか。なんとなく堅いイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、その“張本人”である市村直也教授は、堅い雰囲気とは真逆の、アクティブで笑顔が絶えない人物です。

そんな人柄を表すエピソードを紹介すると、趣味はパラグライダーで空を飛ぶこと。大会に出るほど熱中しており、「この前もあと少しで表彰台だったのですが」と悔しがります。また、最近になってジャズピアノにも挑戦。「まだ全然下手なので、記事には書かないでください」と笑います。

面白いと感じたらとことん突き詰める市村教授。著作権や知的財産に関する法律も、その面白さに魅了された領域でした。

「たとえば、民法の分野はたくさんの裁判例があり、解決の仕方もある程度固まっていますが、知財や著作権は新しい技術やテーマが日々現れており、誰もまだ考えていない問題が提示されます。AIの著作権問題はその象徴でしょう。まだ誰も解決できていない新しいことを考えるのが楽しいですね」

AIのほかにも、時代の変化を大きく受けているテーマは多々あります。市村教授が例に挙げるのは、著作権の「間接侵害」について。著作権は、当事者が著作物を無断利用するだけでなく、他人に利用させることも問題になります。たとえば動画共有サイトやファイル交換ソフトもそのひとつ。「ネット社会の中で間接侵害の問題は日に日に大きくなってきました。いまや著作権侵害の中心的なテーマといえます」。

大学院の講義では、著作権法のほか民法と契約法も担当しており、これらを一体的に学ぶことが重要だと考えています。

なりゆきで就職したJASRAC、なぜ30歳を超えて弁護士に?

プライベートの話で見せた笑顔から一転、法律のことになると表情を引き締める市村教授ですが、そもそもなぜ、弁護士として著作権を専門にするようになったのでしょうか。そのいきさつを聞くと、ふたたび笑顔で答えてくれました。

「大学は法学部でしたが、ほとんど遊んでいて学校には行かないひどい学生でした。法学部ではなく“アホウ学部”でしたよ(笑)。弁護士になることはさらさら考えていなかったですし、就職活動もまともにせず、気づいたら募集しているところが残り少なくなっていました。その中で選んだのが日本音楽著作権協会(JASRAC)だったのです」

学生時代にバンドをやっていたことから、JASRACは知っていたとのこと。そこから著作権の仕事を長く続けたのち、弁護士を目指そうと考えます。

「JASRACの仕事で弁護士の方とやりとりしているうちに、これは自分が弁護士になった方が面白そうだな、と。そこで初めてきちんと法律を学ぶと、予想以上に楽しかったのです。30歳を過ぎてから勉強を始め、4回目で司法試験に合格しました」

それからは弁護士として、著作権を中心とした業務に従事してきました。ちなみに、弁護士と並行してこの大学院の教授になった経緯も“趣味”がきっかけだったようです。

「あるとき、この大学院の立ち上げから関わっていた杉光先生(杉光一成教授)と知り合ったのですが、2人ともサッカーが好きで、一緒に2006年のW杯をドイツまで観に行ったこともあります。そのうちに大学院へと誘われました。もともと人に教えたり、若い世代と わいわい話したりするのも好きでしたから」

市村教授はラグビー通でもあり、高校時代はラグビー部に所属し、2019年に日本で開催されたW杯は、日本戦全試合を現地観戦。「20万円ほどかかりました」と笑います。仕事でも一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンの監事を務めるなど、関わりの深いスポーツと言えるでしょう。

かつて合宿も行った濃いゼミ、初心者にやさしい法律講義

ゼミ生や修了生とのやりとりも多く、飲み会は定期的に行われ、コロナ前はゼミの夏合宿もしていたほど。「私のゼミは論文によって弁理士試験の科目免除を受けられるので、それを目的に来る方も多く、非常に濃いゼミなんですよね」。

講義については、一方通行で教えないのが市村教授の“スタイル”。質問や議論を織り混ぜ、双方向での授業を心がけており、「私の講義で寝る人はいませんよ」と付け加えます。

「法律を勉強したことのない方もたくさんいらっしゃいますので、なるべく身の回りの問題に当てはめて、具体的にイメージできるように心がけていますね」

そんな信条を口にした上で、市村教授はビジネスパーソンが著作権について学ぶ重要性を口にします。

「かつて著作権の知識が必要だったのは、レコード会社や出版社など、一部の業界人だけでした。しかし今はネット社会になり、すべてのビジネスパーソンに著作権が関係してくる時代です。企業や自治体が他の著作物を流用して問題になった、というケースもよく見られますよね。だからこそ多くの方が学ぶべきですし、特に経営に携わる人には必須の知識となるでしょう」

年齢を重ねてもアクティブで、休日になれば空を飛ぶ弁護士。多彩な趣味と柔らかな笑顔が印象的な市村教授は、その雰囲気のままに著作権や法律の仕組みを伝えます。

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