- 虎ノ門大学院ブログ
- 2022年04月28日
修了生インタビュー:川北美裕さん(大手文具メーカー)「もともと研究開発職でしたが、今は化粧品事業成長のために日々邁進しています」
川北美裕さん(45歳)は、文具メーカーに勤務しています。東京都清瀬市の出身、現在は三人家族で神奈川県にお住まい。高校生になった娘さんの反抗期が明けて会話が増え、KIT在学中は励ましあいながら?一緒に勉強をしていたそうです。趣味はゲーム。ファミコン創世記からのゲームファンで、「今はNintendo Switchにはまっており、今夏に発売される新作ソフトに向けて、旧作でトレーニングしています」とのこと。
(※ この事例に記述した数字?事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています)
■ 筆記具企業の化粧品事業部に勤務 |
- 川北さんは今どんな仕事をしているのですか。
とある文具メーカーに勤めています。研究開発職、経営企画部を経て、現在は化粧品事業部に在籍しています。大学では工業化学を専攻し、入社以来13年間ずっとインク開発の技術者でした。その後、経営企画部で2年の経験を積み、化粧品事業部に配属され、間もなく6年目に入ります。
文具メーカーが化粧品製造と聞くと、意外に思うかもしれませんが、描くという機能では技術的に似ているのです。たとえばアイライナーとボールペンには、「手で持つ細長い棒状の道具」「先端から何らかの液を出して対象面に描く」「描き味、描線の品質、持ちやすさ、使いやすさが重視される」など、製品形態や提供価値において、共通点が数多くあります。文具メーカーの立場から、道具としての化粧品性能を考え、消費者が求める新しい価値づくりに貢献していきたいと思っています。
■ 技術者になった経緯 |
- 川北さんが技術者になった経緯を教えてください。
大学4年の頃までは、中学?高校の教員になろうと思っていました。私の母校は部活が盛んな中高一貫の男子校で、私はブラスバンド部に所属していました。生徒数は少なく、教師との距離も近い、居心地の良い環境でした。この環境で教員になることに憧れ、教職を目指すようになりました。
理系を選んだのは、歴史など文系科目の暗記が苦手だったからという、消極的な理由もあります。その点、最小限の法則だけ覚えて、そこから自分の思考で答えを導く理系科目、特に数学や物理は自分に向いていました。高校3年生のとき、大学の推薦枠で理三亚赌场,香港赌场工業化学科に偶然巡り合い、教職を目指すために進学を決めました。
ただ化学、やってみると、意外に面白い。白衣を着て実験するのも楽しかった。教職課程は取ったものの、教員にはならず大学院へ進学しました。そのまま大学に残り研究者を目指すか、一般企業でエンジニアを目指すか悩んだ時期もありましたが、就職氷河期にも関わらず、ご縁をいただいた今の会社に入社しました。そして研究開発センターに配属され、インクの開発に携わり、13年が過ぎました。
■ 技術職から化粧品事業部に移った経緯 |
- そこから経営企画部、そして化粧品事業部に移った経緯は?
ある日突然、「来年度は経営企画部」と辞令を告げられました。その3日後には経営企画部での研修が始まるという慌ただしさです。「まずは自社の有価証券報告書を読んでみよう、そして業界他社と自社を比較してみよう」といわれましたが、それまで会計の勉強など一度もしたことがなく、途方に暮れました。その後「中期経営計画」の策定にも関わりましたが、これも何を根拠に計画を作ればよいかまったく分かりません。四苦八苦を続けるうち、2年が経ちました。すると「次は化粧品事業部」と、辞令が下りました。
化粧品事業部では、老舗化粧品メーカーから新興メーカーまでを顧客とし、アイライナーなどのペン型化粧品を受託製造?販売しています。私の仕事は主に法人営業となりました。経営企画部のとき、「化粧品事業の売上を2倍にするべし」と計画を立てましたが、その計画を自ら実行する立場になりました。異動当初は「新しいことを始めるワクワク感」がありました。化粧品事業部では既存得意先へのルート営業からはじめ、それから徐々に仕事の幅を広げていきました。
KITに入学したのは、化粧品事業部に配属されて3年目のときです。
■ ビジネススクールに関心を持った理由 |
- KITに入学した経緯を教えてください。
ビジネススクールを意識し始めたのは経営企画部に入って1年目のときです。 会社の研修の一環として、某私立大学の短期集中ビジネススクールに参加しました。2週間、伊豆半島の宿舎に泊まり込み、隔離された環境で学ぶ、経営幹部セミナーでした。この研修では、各企業の事例を解読、討議し、その後、必ず手を上げて発言することが求められました。
私も発言しましたが、正直、実のあることを言えた自覚がなかった。研修を終え、会社に戻っても、何を学んだのか言語化して説明できない。結局、何を学んだのか自分でも分かっていない状態で終わりました。
私は何かができないと「くやしがる」タイプです。趣味のゲームでも負けたらくやしい。くやしくなったら練習します。これは、いつかリベンジしないと、と感じました。
化粧品事業部へ異動し、営業の現場に出るようになって、さらに学習の必要を感じました。実はこの頃、「自分は経営企画部に2年在籍し、経営計画を立てた。ビジネスのことは割合に理解できたはずだ」という気分になっていたのです。
しかしそれは「わかった気分」になっていただけで、いざ現場に出ると、具体的にどう動けばよいかが全くわかりません。何というか、踊りのイメージが頭にあっても、具体的な振り付けに落とし込めない、だから体が動かせない、そんな感覚でした。
考えてみれば、自分はずっと技術畑で、ビジネスを現場で体感したことも、体系的に学んだことも、どちらもありません。まずは学ぶしかない、よし、自腹でビジネススクールに行こうと決意しました。
その後、ビジネススクールの6大学合同説明会を見つけ、これなら一度に話が聞けていいなと思い、参加しました。そこで出会ったのが三谷先生です。とにかく話が面白かった。自分のキャリアをどう描き、どう戦略を立てるか、立て板に水で話していく。他の講師の話が「学問寄り」で少々退屈だったのに対し、三谷さんの話はダントツに面白かった。
その後、KITを調べ、個別の説明会にも参加しました。するとまた三谷さんが登壇。今回の話もむちゃくちゃ面白かった。この先生からもっと学びたい、そう思い、KITへの入学を決意しました。
■ 迷いと逡巡 |
- 過去、社内で、働きながらビジネススクールに通った前例はありましたか。
いえ、ありませんでした(その後、よく調べると1人、2人いましたが、当時は知りませんでした)。KITに通うには「熱意、時間、お金」の3つが必要ですが、「熱意」はOKとして、あとは時間とお金です。
時間については、「週末と平日19時から22時」を当てれば、何とかなると思いました。お金の方も、決して安くはないにせよ、教育訓練給付金など補助金を活用すれば、自分でまかなえそうです。しかし、それでも相当迷いました。特に思いあぐねたのが「時間」の問題。当時は2月はじめでした。人事異動があれば、また時間が読めなくなるかもしれません。
周囲にも相談しました。上司の反応は「まあ、いいんじゃない、自分は応援するよ」というものでした。別の先輩からは、「働きながらMBAを取るような、異端の行動は本当に必要か?」と言われました。さあ、どうしようか、また、考えて、考えて、最後は考えてもしかたがない、「いくしかない!」と思い、2019年4月に入学しました。
■ 入学してからの感想 |
- 実際に入学してみていかがでしたか。
1年目の2、3学期ごろのことはあまり覚えていません(授業の内容は復習しましたが…苦笑)。記憶が飛んでいる。それぐらい必死で勉強しました。私は読書の速度が遅く、本を一冊読むのに、普通の人の倍、時間がかかります。課題図書を読みこなすだけで大変でした。
三谷さんの授業も面白かったけど、大変だった。説明会のときは、聴衆として、面白がっていればよかったのですが、入学すると学生として講義に「参加」することになる。課題に対し、発言を求められ、自分なりに発言しても、「で?」と先生に問い返される。要は自分の考えがまとまっていなかったのです。できない自分へのくやしさから、必死で授業についていき、何とか修了までこぎつけました。修士論文のタイトルは、「自社メイキャップ化粧品 OEMビジネスにおけるCRM視点での成長機会の研究」です。晴れてMBAを取得できました。
■ 仕事上の変化 |
- KITに入学して、仕事の上で何か変化はありましたか。
KITに通っている最中に、社内で昇格推薦をもらい、その後、昇格試験を経て、マネジャーに昇進しました。その当時は、自分では変化に気づけていませんでしたが、もしかしたら上司から見たら何か変わっていたのかも。
私はもともと対人コミュニケーションが苦手で、一人でコツコツ研究したいと願うタイプでした。しかし営業マーケティングは、相手あってのことであり、「消費者視点」が重要です。KITでは、「相手に伝わる話をすること」を徹底的に教育されました。そうして学ぶ中で、自分の視点が変わり、自ずと発言や行動も変化し、それが周囲に伝わったのかもしれませんね。
今の化粧品事業を、自社の中核事業になるぐらい成長させたい、そんな意欲があります。さいわい娘がオシャレ好きなので、試作品を娘に試してもらったりしています。自分で使うこともありますよ(笑)。今の仕事で、会社と自分の両方を成長させたいですね!
■ KITの感想 |
- ふりかえってみてのKITへの評価をおねがいします。
まずKITは、「ゼミが毎週ある」のが良いです。毎週、自分の考えをまとめて発表する。そこに一流の講師である三谷さんからからフィードバックが入る。これは、またとないプレゼンの練習機会でした。
「自分の強み、弱みがていねいに認識できる」こともよかった。ひとつの会社にずっといると、自分がどれだけでき、どれだけできないか、位置づけが分からなくなります。それがKITという外界で揉まれる中で、自分の強み、弱みが明確になってくる。私の場合は、口頭でのプレゼンは不得手でしたが、情報をまとめて、整理し、図式化、モデル化することは、案外よくできたと思います。その他、財務会計の授業も非常に楽しめました。もともと技術畑で、数字を扱うのが好きだったからだと思います。
通学当時はコロナウイルスが流行する前だったので、授業が終わった後、みなで飲みに行ったりしました。そんな学生ライフが久々に体験できたのも小さな楽しみでした。
KITで学ぶ中で、ビジネスについて、頭の中に「大まかな地図」が作れました。今は、どこに何があるか、だいたいのアタリがつけられます。この記事を読んでいる人の中には、私のような理系出身者もいらっしゃるかもしれません。MBA取得、ビジネスの勉強、やってみると意外に面白いです。飛び込んでみる価値は十分あると思います。
※ 取材日時 2022年1月
※ 取材制作:カスタマワイズ