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虎ノ門大学院ブログ
2019年08月30日

【授業レポート】産学連携?技術移転特論(高橋真木子)
企業と大学という異質な存在が違いを乗り越え成果をあげるには?

■ 複数のステークホルダーが参加する合同プロジェクト、思った通りにいかない…

仕事の現場であれ、プライベートであれ、こんな経験をされたことがある方は多いのではないでしょうか。本科目のテーマである産学連携?技術移転。オープンイノベーションを実際のビジネスに実装していく時、多くの企業は、大学等の異質な組織?ステークホルダーと協働する必要性があります。最近は、大学の技術移転プロジェクトや研究者を支える専門職URA(University Research Administrator)の活躍に注目が集まっています。大学発のベンチャー企業の数は日本国内で2000社を超え、上場するニュースもよく目にします。

一方で、冒頭にある通り、企業にとっては、大学という組織文化や価値観が異なるセクターをどう理解し、どうやって協働していくかというチャレンジングな内容を含んでいます。この違いを乗り越え、真に価値ある協働の成果を得ることは決して容易なことではありません。


■ 企業と大学がWin-Winの関係をつくるには?

KIT虎ノ門大学院が、1学期(4月~5月)に開講している「産学連携?技術移転特論」では、企業と大学がWin-Winの関係を構築するために、理論的な整理から主要な連携スタイルまで、現実に起こった事例を国際的なトレンドを踏まえ解説します。より深い学びにつなげるため、毎回終了後すぐにリアクションペーパーを提出することも大きな特徴です。

担当するのは、高橋真木子教授。これまで東工大、東北大、理化学研究所において産学連携活動を推進し、数々の研究開発マネジメントを経験してきたこの分野のスペシャリストです。現在は、技術移転?産学連携の研究と知財のマネジメント、アカデミアの研究力強化を研究対象としており、経済産業省や文部科学省などの政府の委員会でも有識者として活躍しています。

さらに、大学における知財マネジメントのリアルな話、企業との連携コーディネートの成功例や醍醐味、その苦労を知るために、トップクラスの実務者をゲスト講師として迎えています。今年度は、(株)東京大学TLO 創設者の山本貴史氏と、九州大学学術研究?産学官連携本部の平田徳宏氏による特別講義が行われ、受講者とインタラクティブな議論が交わされました。


■ 実例に基づくケースをディスカッション

今回レポートするのは、2コマ連続×4日間で構成される最終日、7?8コマ目の様子です。受講生は企業において研究開発や知的財産の業務に関わる方が中心です。総まとめとなるこの日は、高橋先生が実際に経験した事例に基づくケース教材を使用して、グループでの検討とディスカッションを行いました。


ケースを分析して作戦を練り、模擬交渉に臨む受講生

とある最先端の研究を、大学と複数企業が共同研究に取り組むというこのケース。大学での研究自体は素晴らしい成果をあげる一方で、異なる立場や利害を有する複数の当事者間の交渉が難航し、想定ほどの前向きな関係が作れないという状態に…。この状態をどう打破するかがこの日のテーマです。

ケースを客観的に分析するだけではなく、受講生を複数グループに分けて模擬交渉を実施。事前の作戦会議では各グループとも活発な議論が行われていましたが、いざ本番となると、皆さんお互いが腹の探り合いで発言を躊躇する場面もありました。机上の空論ではなく、知識だけでは乗り切れない交渉当事者の苦労を体感してもらい、その上で、どう対処するべきなのかを考える、得難い機会になります。

模擬交渉の終了後には、高橋先生から具体的かつ的確なフィードバックがあり、今回のケースを通して理解して欲しいこと、産学連携プロジェクトを推進する際のマネジメントスキルや専門知識、代表的な利益相反事例やリスクマネジメントの考え方についても解説がなされました。


■ 最先端ゆえの難しさ、やりがい、楽しさ

産学連携?技術移転の世界を「歴史が浅く知見もそう蓄積されておらず、一方課題はまだ山積み」「萌芽期をそろそろ脱し、定着?普及に向かう転換期」であり、それゆえに「見方を変えれば、知財の専門家にとって、自分の知識と経験をフル活用できる挑戦しがいがあるフィールド」と、おっしゃる高橋先生。この日の教室も、まさにそんな最先端の難しさと、それゆえのやりがいや楽しさが入り混じった空気で、平日の夜22時を過ぎても受講生の熱気にあふれていました。

さらに発展科目として、2学期(6月~7月)に「技術商業化特論」を開講しています。主に技術系の企業で新規事業創出や外部連携を担当する方、将来起業を検討している方を対象に、技術シーズが商業化されるプロセスを学びます。経営学における「ナレッジマネジメント、外部知識との連携方法」の概観を紹介した上で、日本の第一線で活躍する2名のベンチャーキャピタリストをゲスト講師にお迎えし、大学発ベンチャーの成長プロセスとベンチャーキャピタルの活動についてお話いただきます。

KITの教育プログラムに興味ご関心のある方は、ぜひ一度、虎ノ門キャンパスで開催される講義見学&大学院説明会イベントにお越しください。


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