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【高大連携レポート】
山形市立商業高校「情報教育講演会」
①全校生徒向け「生成AIとデータサイエンスの活用法」

2025/12/23 NEW

2025年12月17日(水)午前、山形市立商業高校の全校生徒840名を対象に、金沢工業大学 情報理三亚赌场,香港赌场 知能情報システム学科の山本知仁教授による特別講義「高校での学びを加速する生成AIの活用法とデータサイエンスの活用法」が実施されました。

本講演は、生成AIとデータサイエンスが高校教育に与える影響と、その具体的な活用方法をテーマに行われました。山本教授は、AI技術の進化が教育現場に大きな変革をもたらしている現状を示し、商業高校における資格取得や課題研究、さらには部活動におけるデータ活用の可能性について、具体例を交えながら解説しました。生徒はタブレットやスマートフォンを使って、生成AIを操作しながら演習を行いました。

1.生成AIの活用法と演習

生徒の半数以上が生成AIを利用した経験を持つ中で、山本教授は生成AIの性能向上が教育に与えるインパクトを強調しました。AIは、高校で学ぶ基礎的な知識を問う問題や、答えが一意に決まる資格試験の問題を解答することが得意であり、AIを活用することで、学習の効率が飛躍的に高まる可能性があると述べました。

演習では、生徒が以下のようなプロンプトを入力し、AIの応答を体験しました。

?英会話練習:留学の準備やスピーキング試験の対策として、AIとの対話を実施。

?総合型入試の面接練習:志望理由を問う質問に対し、模擬面接形式で回答。

?音楽生成:昼休みに聴きたい楽曲をAIが即時作曲。

?簿記問題の解答と解説:問題画像を読み込み、正答と丁寧な解説を提示。

?画像生成:大雪が降った山形市内の風景を生成。

これらの事例は、生徒の関心を強く引き、AIが「学びの加速装置」として機能することを実感させました。さらに、教員向けには授業計画や教材作成の効率化に関するプロンプト事例も紹介され、業務改善への応用可能性が示されました。

一方で、教授は注意点として、ハルシネーション(虚偽情報)や著作権侵害のリスク、個人情報の取り扱いに言及し、結果の検証と倫理的配慮の重要性を強調しました。

2.探究学習と課題研究の視点

山本教授は、AI時代における学びの質的転換について論じました。教授は「資格取得に重きを置いた学習によって知識やスキルを身に付けることは重要であるが、それらを必要とする業務は将来的にAIに代替される可能性がある」と指摘し、主体的?対話的で深い学びの必要性を説きました。

具体例として、以下のような課題設定を提示しました。

?「スポーツとデータサイエンス」をテーマに、バレーボールのアタック決定率向上策を探究。

?地域資源を活用した商品開発(例:さくらんぼを使った新商品)に関する情報収集方法の提示。

これらは、教科書に無い問いを自ら設定し、データ収集?分析?発表までを行う探究型学習のモデルであり、教授は「AIは答えを教えるだけでなく、課題設定や視点を拡げることにも活用できる」と述べ、生成AIを探究学習の伴走者として位置づけました。

3.データサイエンスの可能性

続いて、データサイエンスの基礎と応用事例が紹介されました。身近な例として「雨雲レーダーによる行動判断」を挙げ、データ活用が日常生活に浸透していることを示した上で、以下の事例を提示しました。

?マーケティング:コンビニのポイントカードによる購買データ分析。

?スポーツ解析:

バレーボールにおけるレシーブ成功率とアタック決定率の関係。

サッカー?フットサルでの運動量と勝率の関係。

バスケットボールにおける得点効率の重要性。

教授は「根性論ではなく、データに基づく戦略が勝敗を左右する」と強調し、部活動におけるデータ活用の有効性を説きました。また、大学進学後の学びとキャリア形成に関するデータも提示し、専門高校出身者は入学時に不利でも、大学での努力により成績を挽回し、大企業への就職率が高いという分析結果を示しました。

生徒の感想

最後に、生徒代表者から以下のようにお礼の言葉が述べられました。

山本先生の講演を通じ、AIと競争するのではなく、並走してより良い関係を築く重要性を学びました。特に、AIには代替できない「同じ空間での対面コミュニケーション」こそが、今後人間が意識的に守るべき力だと考えます。AIの普及に伴い、こうした人間独自の強みが失われる懸念があるからこそ、時にはAIと適切な距離を保ち、デメリットを避けながら共存することが不可欠です。AIと人間のそれぞれの特性を正しく理解し、AIが常に隣にいる今の時代において、「人間にしかできないこと」を追求していく決意を新たにしました。貴重な気づきをいただき、本当にありがとうございました。

アンケート結果

講義後の全校生徒のアンケートによると、「AI?データサイエンスへの関心の変化」には、肯定的に「関心が高まった」と約90%の生徒が回答し、感覚に頼らず、データに基づく科学的な考え方を重視するコメントも多く寄せられました。また、スポーツ分野においても、AI活用や分析役割への関心が高まり、担当教員からも生成AIやデータサイエンスを身近で実用的なものとして捉えるようなったと、講演後の生徒の成長を実感する感想をいただきました。

総括

本講演は、生成AIとデータサイエンスが教育?資格取得?探究学習/課題研究?スポーツに及ぼす影響を、実践的なデモンストレーションを通じて示した点で極めて有意義でした。AIを「脅威」ではなく「学びのパートナー」として捉え、主体的な学びとデータ活用を組み合わせることが、これからの高校教育に求められる姿であると強く印象づける内容でした。

<リンク>

山形市立商業高校【DXハイスクール】 情報教育講演会(金沢工業大学 山本知仁教授)

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金沢工業大学研究室ガイド 情報理三亚赌场,香港赌场 知能情報システム学科 山本知仁 研究室