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【第60回地盤工学研究発表会 全国大会で優秀発表賞受賞】
「月南極における季節変動および月震を考慮した太陽光パネル設置箇所の選定に関する研究」で。大学院環境土木工学専攻を2025年3月に修了した中島あおいさん

2025/10/17 NEW

金沢工業大学 大学院工学研究科 環境土木工学専攻博士前期課程を2025年3月に修了した中島あおいさん(現?鹿島建設株式会社)が2025年7月に山口県下関市で開催された「第60回地盤工学研究発表会」全国大会で修士論文の研究内容について発表し、優秀発表賞を受賞しました。

中島さんの同賞受賞は2013年11月に続き、2度目です。

「第60回地盤工学研究発表会」で優秀発表賞を受賞した中島あおいさん <br> (『金沢工業大学入学案内2026』p.006)

【受賞した発表内容】

【発表テーマ】

「月南極における季節変動および月震を考慮した太陽光パネル設置箇所の選定に関する研究」


【発表者】

中島 あおい 金沢工業大学大学院(現鹿島建設株式会社)
高原 利幸 金沢工業大学 環境土木工学科 准教授


【研究の概要】

アメリカ航空宇宙局(NASA)ではアルテミス計画と呼ばれる有人宇宙飛行計画を進めている。最大4人の宇宙飛行士が月に1週間程度滞在するアルテミス計画IIIの後、長期間の探査を行うため月面基地の建設が予定されており、特に月の南極地域が候補地とされている。本研究は、月南極における太陽光パネルの最適な設置条件を、発電効率と、月震※を考慮したパネル設置適地における地盤安定性の両面から検討したものである。

月南極では太陽高度が非常に低く(−1.5?1.5度)、太陽光がほぼ水平に入射するため、平地にパネルを設置すると広大な間隔が必要となり、効率が低下する。一方、斜面に設置することで必要面積を大幅に削減できるが、月震や隕石衝突による斜面崩壊のリスクもある。

まず、JAXA提供の太陽ディスク可視割合データ(2030年の1年間、20mメッシュ)を用いて、日照条件の良い地域を抽出。年間平均36%以上、冬季32%以上、夏季37%以上の地域を候補地とした。これらの地域は主にクレーター縁や山の斜面に位置しており、季節によって日照条件が大きく変化するため、パネル設置は分散が必要とされた。

次に、RSA(移動可能な垂直型太陽光アレイ)を想定し、1pixelあたりの発電量を算定。発電量が400kWh/h以上の地域を基準に、通年で安定して発電可能な地域(クレーター内側?左の山)と、夏季に特化した地域(クレーター外側?右下の山など)に分類。特に効率の良い4地域について詳細に検討した。

さらに、アポロ計画の地盤データとJanbu法を用いて、各候補地の斜面安定性を解析。マグニチュード5.3の月震を想定し、震央からの距離ごとの地動加速度(PGA)をもとに水平震度係数kを算出。結果、40km離れた地点でも崩壊の危険性があることが判明。特にすべり面角度が10度程度の斜面では、最小強度条件下でk=0.2?0.5、最大強度でもk=0.5?0.9となり、月震によるk_mq=0.86(40km地点)を下回るため、安定性に課題がある。

結論として、発電効率と地盤安定性の両面から最適な設置条件を検討する必要があり、今後は月震の種類や規模に応じた崩壊リスクの詳細評価、対策工の導入、コスト比較などが求められる。

※月震
月の表面で起こる地震。地球の地震と比べて規模は小さいが、地球の引力や隕石の衝突、そして昼夜の激しい温度差による熱振動などが原因で発生する。アポロ計画の際に初めて観測され、その後も観測が続けられてきた。

(関連ページ)

大学院環境土木工学専攻の中島あおいさんが地盤工学研究発表会 優秀発表者賞を受賞。「?南極地域での斜?を利?した効率的な太陽光パネル設置とその安定に関する研究」で(2023/11/14)

「物語の始まりへ」 File.1034 中島あおい

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