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【体験レポート】生成AIが教育を変える——大聖寺高校で教員向け研修を実施。
金沢工業大学 山本知仁教授が語る「AIと共に歩む教育の未来」
2025年7月2日(水)、石川県立大聖寺高校(石川県:吉本達治校長)にて、教員を対象とした生成AI活用研修が開催されました。講師は、AI研究の第一線で活躍する金沢工業大学 情報理三亚赌场,香港赌场 知能情報システム学科の山本知仁教授。参加した教員30名は、AIの進化と教育への応用について、理論と実践の両面から深く学ぶ貴重な機会となりました。
冒頭、山本教授は「AIを敵に回すのではなく、味方につけることが教育の質を高める鍵です」と語り、AIとの協働がもたらす可能性を力強く提示。教育現場におけるAIの活用は、もはや選択肢ではなく、必然の流れであることを強調しました。
研修では、AIの技術的進化が教育に与える影響について、歴史的背景から丁寧に解説されました。1960年代のパーセプトロンから始まり、1980年代のニューラルネットワーク、2010年代のディープラーニング、そして現在のトランスフォーマー技術へと至る流れは、まさに「知能の進化の物語」。
特に、ChatGPTやGoogle Geminiなどの生成AIは、文字?画像?音声?動画?3Dモデルなど、あらゆる形式の情報を生成可能であり、教育現場においても教材作成、課題研究支援、業務効率化など多方面での活用が期待されています。
教員が日々直面する「授業準備の負担」を軽減するために、AIは強力なパートナーとなります。授業計画の立案、時間配分の最適化、教材の草案作成など、AIが支援できる領域は広範囲に及びます。例えば、数学の授業で必要な図形やグラフの生成、英語の文法解説の補足資料なども、AIが瞬時に作成可能です。
生徒の主体的な学びを促す「課題研究」では、テーマ設定から情報収集、データ解析、発表資料の作成まで、AIが多角的に支援します。実際の事例として、「高校サッカー部のゴールが生まれるエリアの分析」や「睡眠法に関する文献調査」などが紹介され、AIが生徒の思考を深める「足場かけ(スキャフォールディング)」として機能することが示されました。
保護者対応メールの下書き、会議録の自動生成、成績に関する説明文の作成など、教員の業務負担を軽減する具体的な活用例も多数紹介されました。AIが「認知的負荷」を下げることで、教員が本来注力すべき「生徒との向き合い」に時間を割けるようになるという点は、多くの参加者の共感を呼びました。
AIに的確な指示を与える「プロンプトエンジニアリング」は、教育現場でのAI活用において極めて重要です。単に「答えを求める」のではなく、「ヒントを与えてほしい」「中学生にもわかるように説明してほしい」といった工夫により、AIの応答の質が劇的に向上します。
山本教授は、「プロンプトの質が、教育の質を左右する」と語り、教員自身がAIとの対話を設計する力を身につけることの重要性を強調しました。
研修では、文章生成だけでなく、画像?音楽?動画の生成についても説明されました。例えば、授業のテーマソングをAIが10秒で作曲したり、プレゼン資料のスライドを自動生成や動画を作成することが可能で、スキルがなくても誰でも簡単に、素早く、創り上げることができ、これまでの作業時間が大幅に削減されます。
また、これらの機能は、単なる「便利なツール」ではなく、生徒の興味を引き、学習意欲を高める「教育的な仕掛け」として活用できる可能性を秘めていることが説明されました。
後半では、スマートフォンのセンサーや心拍計を用いたバスケットボールの活動量解析の事例が紹介されました。活動量と勝敗の関係、心拍数の推移などを科学的に分析することで、スポーツ教育にもAIとデータサイエンスが融合する可能性が示されました。
このような実践は、探究学習のテーマとしても魅力的であり、生徒の科学的思考力を育む教材としての価値も高いといえます。
山本教授は、囲碁AI「AlphaGo」の登場によって人間の打ち手の質が飛躍的に向上した事例を紹介し、「教育でも同様の飛躍が起こり得る」と語りました。AIを活用することで、地方の高校からでも東京大学などの合格者を多数輩出することは十分に可能であり、教育の地平は大きく広がっています。
また、今後は言語AIだけでなく、ロボットに搭載された「フィジカルAI」が登場することで、教育?介護?製造など多様な分野に影響を与えることが予想されます。教員がAIとどう向き合い、どう活用するかが、教育の未来を左右する重要なテーマとなっています。AIは、教員の「右腕」として、そして生徒の「学びの伴走者」として、教育の未来を共に創る存在であり、怖がらずに教員も活用していくことが強調されました。
参加した教員からは、「AIの可能性を実感した」「授業や業務にすぐに活かせそう」「生徒の探究活動にAIを取り入れたい」といった前向きな感想が多数寄せられました。
今回の研修は、教育現場における生成AI活用の第一歩として、大きな意義を持つものでした。金沢工業大学では、今後も地域の教育機関と連携し、AI技術を通じた教育の質向上に貢献してまいります。
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