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【心理科学科の学生が社員として長期間、工場の雰囲気改善に取り組む】
金沢工業大学の社会実装型産学協同教育「KITコーオプ教育プログラム」北菱電興 旭丘コーオプ教育報告会が開催されました

金沢工業大学では社会実装型教育として「KITコーオプ教育プログラム」と呼ぶ産学協同教育を進めています。当プログラムは企業担当者を実務家教員として招聘し、学生は社員として4か月以上の長期間にわたって自らの専門に関連した業務に従事。業務内容については事前に大学と企業との間で打ち合わせが行われ、企業より対価も支給されます。学生にとっては、授業で身につけた能力を社会で活用する絶好の機会となっています。

このたび、北菱電興株式会社(石川県金沢市)との産学協同で実施したKITコーオプ教育プログラム報告会が、2025年3月12日(水)、金沢工業大学扇が丘キャンパスChallenge Labで開催されました。

報告会は金沢工業大学の社会実装型研究の拠点「Challenge Lab」で行われた

北菱電興とのKITコーオプ教育プログラムは、2020年11月に株式会社NTTドコモを交えた3者にて5G を活用したスマート工場「Smart Smile Factory」を同社いなほ工場で整備したことがきっかけとなり、2020年から始まりました。

学生は約6か月間、“社員”として北菱電興株式会社のプロジェクトに携わり、いなほ工場における「工場で働く従業員の幸福度を向上させるための測定解析技術等の検討」というテーマに社員とともに従事してきました。

この活動を通じて実現されたいなほ工場における幸福度向上と雰囲気改善の成果が北菱電興から評価されたことから、同社開発センター(旭丘工場) における雰囲気改善に向けた「旭丘コーオプ教育」が新たに2024年度からスタート。金沢工業大学からは、心理科学科4年の上月杏純さんと、指導教員として伊丸岡俊秀教授、渡邊伸行教授が参加しました。

2025年3月12日に行われた報告会には、北菱電興から代表取締役社長の小倉一郎氏と役員の方々、実務家教員として学生の指導にあたった酒元一幸氏、そしてコアメンバーとして学生と一緒に活動した山口拓也氏ほか4名のメンバーが参加。金沢工業大学からは、大澤 敏学長と「旭丘コーオプ教育」指導教員、「いなほ工場コーオプ教育」に携わった教員など総勢24名が出席しました。

北菱電興の山口氏による開会宣言の後、活動内容の発表が行われました。
北菱電興 開発事業部 事業企画開発室の西尾すみれ氏が「旭丘コーオプ教育」が行われた経緯と今期のコーオプ教育の活動目的を紹介。具体的な施策内容について心理科学科の上月さんが説明し、施策結果と考察については北菱電興 開発事業部 開発1部 管理部 管理課の川端亜希子氏が発表しました。

「旭丘コーオプ教育」の経緯と活動目的を説明する北菱電興 開発事業部 事業企画開発室の西尾すみれ氏

西尾氏は金沢工業大学大学院機械工学専攻 博士前期課程1年在籍中に北菱電興いなほ工場でのKITコーオプ教育プログラムに参加。これがきっかけとなり北菱電興に就職した

心理科学科4年の上月さんは具体的な施策内容について説明を行った

施策結果と考察について発表する北菱電興 開発事業部 開発1部 管理部 管理課の川端亜希子氏

今回のコーオプ教育は活動目的して「旭丘工場の雰囲気を学術的な見解を付加しながら改善していくこと」が掲げられました。

建屋の改築等の環境の変化と社員のモチベーションとの関連性は非常に低いことが全社員対象の意識調査の結果、わかったため、より社員の満足度に寄与する人間関係などの「雰囲気」を改善するため、メンバーは科学的?心理学的アプローチを採用。会社内の他部署や地域?他企業にも貢献できる汎用性のあるものを目指しました。

今期の活動目標として、より社員の満足度に寄与する人間関係などの「雰囲気」の改善を目指したことが西尾氏から説明された

雰囲気を「見える化」するため、上月さんは自らが専攻している心理学の考え方をメンバーに伝え、学術的に評価を進めました。
メンバーは「余裕度天気チェッカー」という施策を考案。楽しみながら施策に参加できる工夫に取り組みました。

「余裕度天気チェッカー」について説明する上月さん

成果報告を聞き入る北菱電興の小倉一郎代表取締役社長(写真左)

実施前後のアンケートは、「尺度を用いたアンケート」を用い、信頼性、妥当性を担保した形で進められました。

結果としては、実施期間が短く実施前後に明確な差は出ませんでしたが、「余裕度天気チェッカー」を話題にコミュニケーションが増えたとの報告がありました。

活動内容の結果について報告する川端氏

発表後、今回の「旭丘工場の雰囲気の改善」に取り組んだコアメンバーから所感が述べられ、社員から「学生を受け入れて一緒に活動することで、責任感を強く意識した」「心理学の考え方を初めて知った。仕事上も役に立つと感じた」などの声があったことが報告されました。

また上月さんからは「今まで大学以外での交流がなかったため、刺激になりました。また心理学が社会に出ても使えることも実感できました」と充実したプログラムであったことが伺えました。

続いて行われた質疑応答では、大澤学長から「余裕度天気チェッカーはぜひ大学でも取り入れたい」との発言があり、会場が盛り上がりました。

「余裕度天気チェッカーはぜひ大学でも取り入れたい」と話す大澤学長

鈴木亮一学長補佐?ロボティクス学科教授は、西尾さんが金沢工業大学大学院時代に北菱電興とのコーオプ教育に参加し、今回はコーオプ教育で金沢工業大学の学生を受け入れる立場になったことの意義について触れた

西尾氏が大学院生時代に研究指導教員として北菱電興いなほ工場でのコーオプ教育を担当したロボティクス学科 河合宏之教授

写真左から西尾氏、上月さん、川端氏

指導教員総評を行う北菱電興 酒元一幸取締役

指導教員総評を行う伊丸岡俊秀 心理科学科教授

最後に北菱電興の小倉代表取締役社長と金沢工業大学の大澤学長から代表者総評が行われ、こうしたコーオプ教育の活動は継続して続けていくことが重要と、成果発表会を締めくくりました。


「旭丘コーオプ教育」に携わったコアメンバー
写真左から

?開発事業部 開発1部 管理部 管理課 川端亜希子氏

?開発事業部 開発1部 産機エンジニアリング部 製造課 宮下智之氏

?開発事業部 開発1部 管理部 管理課 山口拓也氏

?金沢工業大学 情報フロンティア学部 心理科学科 上月杏純さん

?開発事業部 開発1部 産機エンジニアリング部 技術課 島本真吾氏

?開発事業部 事業企画開発室 西尾すみれ氏

KITコーオプ教育プログラムは、同じ課題を先輩から後輩へ繋ぎながら解決していく継続性が重視されています。

今回、北菱電興のコアメンバーとして参加した西尾氏は、金沢工業大学大学院の修了生でした。学生時に北菱電興のコーオプ教育に参加し、企業に魅力を感じて北菱電興に入社。今回は社員と学生、先輩と後輩という2面で活動しました。

金沢工業大学では、この様な素晴らしい繋がりをこれからもコーオプ教育を通じて続けてまいりたいと思っています。


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