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【SDGsに関する地域課題の解決策を野々市市長に提案】
経営情報学科2年生が「プロジェクトデザイン実践」で
金沢工業大学では「プロジェクトデザイン教育」という問題発見?解決型の教育を教育の主柱に位置づけています。
2年生は、前学期の「プロジェクトデザインII」において、地域や企業など実社会の問題解決に向けて、メインテーマをもとに取り組むプロジェクトテーマを見出し、「問題発見→現状把握→問題の原因分析に基づく課題決定→解決に向けた達成条件の設定→解決案の決定」に取り組みます。
さらに後学期の「プロジェクトデザイン実践」では、提案した解決案の有効性の検証に向けて、仮説の立案から検証までを行います。
経営情報学科では、自治体のSDGs課題をテーマに、解決策の創出から有効性の検証までを実施します。キャンパスが立地する野々市市のSDGs課題に全12チームが取り組み、うち提案内容が優れた3チームが1月21日(火)に野々市市役所で行われた成果発表会で発表しました。
(担当教員:経営情報学科 狩野剛 准教授、基礎教育部 プロジェクトデザイン基礎教育課程 坂倉忠和 准教授、経営情報学科 大澤潤 講師)
成果発表会には野々市市の粟貴章市長と、金沢工業大学から大澤敏学長、SDGS 推進センターの平本督太郎所長が出席。3チームは以下のテーマで発表しました。
■ 発表内容
(1)経営情報学科2年 第3班
題目:「SDGs未来都市ののいち」普及啓発アイデア
内容:YouTube広告を使った野々市市のSDGs普及啓発
(2)経営情報学科2年 第12班
題目:Liqlid学校改革ゲーム
内容:中学生を対象とした「Liqlid学校改革ゲーム」の作成
(3) 経営情報学科2年 第5班
題目:石鹸作成ワークショップ
内容:廃棄予定の椿を使用した石鹸作成ワークショップ
■第3班の「SDGs未来都市ののいち」普及啓発アイデアの概要
(経営情報学科2年 七澤龍平さん、丹羽樹さん、原悠太さん、藤代音秋さん、本野貴大さん、山下 晴輝さん)
3班は、YouTube広告を使った野々市市のSDGs普及啓発を提案しました。
まず野々市市の現状として、野々市市のYouTubeチャンネル再生回数が伸び悩び、そのため情報が効果的に伝わらず、チャンネルを通じた市民とのコミュニケーションや地域の魅力発信が十分に機能していないこと、またSDGsに関して企業との連携活動は行われているものの、具体的な成果や進展はまだ見られていないことをあげました。
そこで、3班は、YouTubeのシェア率が88%であることから、
?野々市市民と野々市市に通学通勤している計50,439人の8割がYouTubeを使用していると仮定し、4万人に広告を配信
?広告を見た人のうち、10%がSDGsの活動に参加したくなる動画フォーマットを提案
ということを成果目標として設定。YouTube広告として「人間が一切写っていないイベントの広告動画」「野々市市役所を背景としたイベントの広告動画」「人が映ってイベントの広告を行う映像」の3パターン作成し、金沢工業大学 経営情報学科2年生を対象に、次のアンケートを行いました。
?「最初の5秒で印象に残った映像はどれですか?」(選択式)
?「この映像を『色彩』『音楽/BGM』『ナレーション』『映像の内容』『メッセージ性』について5段階で評価
そして、どの広告動画が最も効果的か検証しました。
その結果、最初の5秒で最も印象に残った映像として「人間が映ってイベントを紹介する映像」を挙げた回答が86%にのぼり、最初の5秒のインパクトが広告全体の印象を左右することがわかり、これをSDGsイベントの告知広告のテンプレートとして提案しました。
■第12班の「Liqlid学校改革ゲーム」の概要
(経営情報学科2年 池田陽翔さん、井上色葉さん、大仲凛人さん、中村駿希さん、棒田真弘さん、室戸一真さん)
第12班は、中学生が楽しくLiqlidの使い方を学べる「Liqlid学校改革ゲーム」を提案しました。
Liqlidは、株式会社Liquitous(神奈川県横浜市)が開発した”市民参加型合意形成プラットフォーム”。誰でも行政に直接声が届くのが特長で、野々市市でも公式に採用しています。
第12班は、令和5年10月に策定された『野々市市SDGs未来都市計画』(https://www.city.nonoichi.lg.jp/uploaded/attachment/33979.pdf)の「(社会)あらゆる世代が交流し、誰もがまちづくりの担い手であるまち」に着目しました。
未来都市計画には、
「金沢工業大学を中心に展開している地域課題解決を目的としたプロジェクトデザイン教育や、SDGsをゲームの要素を通して学ぶことを目的として開発した「ゲーミフィケーション教材」を活用した PBL 教育を同大学の支援のもと、小中高等学校に展開する」(p.9)
「若者が本市に誇りと愛着を感じ、これからも住み続けたいと思うまちづくりを進めていくためには、一人ひとりが行政の意思決定プロセスに参加できる環境を整備する必要があり、市民の多様な意見を見える化し、議論を通して意思決定するためデジタルツールの導入が重要である。市民参加型合意形成プラットフォームを実現し、若者が提案した取り組みを積極的に社会実装していくことによって、市民からのボトムアップで、デジタル生活指数や自治体 DX指数を向上させていく」(p.10)
とうたわれていますが、令和5年の策定時の「自治体DXの指数」が低く(p.9)、Liqlidの利用者が少なく意見が十分に収集できないことを課題と捉えました。
さらに野々市市内の「授業にPBL教育を導入した学校数」も少ないことから(p.9)、第12班は野々市市の課題に基づく解決策として、中学生を対象とした「Liqlid学校改革ゲーム」の作成を、価値を提案するための手法であるNABCフレームワークを使い[1]、立案しました。
[1]NABCフレームワーク
Needs 顧客が求めていること
Approach ニーズを満たす手段
Benefit per cost 費用対効果
Competitor 競合
上記の4つの視点から価値提案を改善していくフレームワーク
こうして以下の内容の「Liqlid学校改革ゲーム」を立案しました。
?参加者(中学生)が生徒役と校長役に分かれ、学校の問題を解決するゲーム
?良い案を選び、「いいね」を押すことで投票し、Liqlidの使い方を学ぶ
?投票結果をもとに改善策を選び、理解を深める
そして、「若者が学校改革ゲームとしてLiqlidの使い方を学習できる」という仮説を立て、まずは大学生20名を対象に検証を実施。
「Liqlidの使い方を理解できた」「自分の考えを整理して伝えることができた」「自分で問題定義することができた」「ゲームで楽しくLiqlidを学ぶことができた」というアンケート4項目でいずれも「はい」が8割を超え、目標が達成できました。
■第5班の「石鹸作成ワークショップ」の概要
(経営情報学科2年 小保田理仁さん、廣田凱斗さん、上部基さん、若林侑弥さん、和田健汰さん)
第5班は、廃棄予定の椿を使用した石鹸作成ワークショップを提案しました。
野々市市では椿を市花木としています。市の中央公園は、多種?多数の椿が観賞できる「ののいち椿館、椿山」があり、令和2年に国内で9園目?本州では初の“国際優秀つばき園”に指定されています。
公園では地面に落ちた椿の花はきれいなものでも廃棄され、中央公園全体のゴミの量は枝や落ち葉も含め、年間で53770リットルにのぼっています。
この現状を踏まえ、第5班は、廃棄予定の椿を使用した石鹸作成ワークショップの開催を提案しました。
『野々市市SDGs未来都市計画』では、SDGsの「12.つくる責任 つかう責任」と「13.気候変動に具体的な対策を」に関連した「市民?企業向け環境ワークショップの参加者数」の指標として、策定時の2022年3月時点での0人から、2025年は300人と目標値を設定しています。
そこで第5班はプロジェクトデザイン実践での目標値を以下の2点に設定し、
?ワークショップ受講者の80%がアンケートで環境に関しての意識が変化したと回答すること
?ワークショップ開催前の状態より、環境問題や野々市市を身近に感じてもらう
上述の価値を提案するための手法であるNABCフレームワークを使い、具体的手段として、
?親子の話し合いの時間を意図的にとることができるワークショップとして椿を使用した石鹸作成ワークショップを実施
?環境?椿についてのクイズを出題
?ワークショップ前後でのアンケートで、環境への意識調査を実施
という3点に取り組むことにしました。
そして大学生(n=17)に向けて石鹸作りワークショップを開催。
?クイズの内容が子供でも理解できるものか?
?アンケートは回答しやすいものか?
?クイズがどのような効果をもたらすか?
?意識は実際に良い方向に変化するのか?
?野々市市や椿について知ってもらえるのか?
以上の5点について検証を行いました。
そして検証の結果、環境問題をより身近に感じてもらうには、幼少期からの活動が必要であることや、世代を超えた活発な交流が、環境問題を自分事にするのではないか、という意見が班内の話し合いで出てきたことに触れ、発表を終えました。
最後に粟貴章野々市市長が3つの班の発表について講評を行い、YouTubeのテンプレートも含め、いずれも市として実際に行動に移したいと評価されました。
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