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【液体の海があると推定される土星の衛星エンケラドスの氷床突破装置を提案】夢考房人工衛星プロジェクトが「第31回衛星設計コンテスト」で日本天文学会賞を受賞
「第31回衛星設計コンテスト」 最終審査会が2023年11月25日(土)、東京都千代田区の一橋講堂で行われ、アイデアの部に出場した夢考房人工衛星プロジェクトが日本天文学会賞を受賞しました。
【衛星設計コンテストについて】
衛星設計コンテストは、日本機械学会、日本航空宇宙学会、電子情報通信学会、地球電磁気?地球惑星圏学会、日本天文学会、宇宙航空研究開発機構、宇宙科学振興会、日本宇宙フォーラム、日本ロケット協会の主催によるコンテストです。
アイデアの部は、人工衛星に限らず、打上げロケット機体の利用、弾道飛行ミッション、月?惑星探査、衛星搭載機器、国際宇宙ステーションなど、広く宇宙を利用するものであれば、どのような内容でも応募が可能です。
審査には科学的?技術的な実現の可能性や高い独創性が求められます。また宇宙開発に関連する機関?企業からのプロの研究者?技術者が、参加者の提案に対して繰り返し質問やアドバイスを投げ返すシステムがとられるため、貴重な勉強の機会にもなっています。
【受賞した夢考房人工衛星プロジェクトの作品について】
このたび受賞した夢考房人工衛星プロジェクトの作品は「エンケラドス氷床突破装置『Bagger』」でした。
プロジェクトから以下の5名が取り組みました。
福澤 慧 さん(航空システム工学科3年)
高橋 虎太郎さん(機械工学科3年)
池岡 美佳さん(ロボティクス学科3年)
豊岡 恵梨果さん(航空システム工学科3年)
橋口 楓子さん(ロボティクス学科3年)
エンケラドスは土星の衛星のひとつです。カッシーニの探査結果から、液体の海があると推定され、間欠泉からは有機物の噴出も確認されているため、生命が存在する可能性が高まっています。しかしエンケラドスの表面は平均で20kmから25kmという分厚い氷に覆われ 、水中に探査機を投下させることが困難だと考えられています。
夢考房人工衛星プロジェクトは、エンケラドスの南極周辺の氷の厚さが1kmから5km程度であることに着目し、エンケラドスの水中を探査するために電熱により氷に穴を開け、探査機を水中に投入する経路を確保するための装置として「エンケラドス氷床突破装置『Bagger』」を提案しました。
「Bagger」は高さ2800mm、直径700mmの円筒形状の装置の中に、加熱機構、切断機構、把持機構、排水機構、移動機構という5つの要素をもった装置です。
①氷床を溶かしながら装置を下降させ
②ある程度の氷床を溶かした後、氷塊(ひょうかい)状に切り出す
*プロジェクトではこの氷塊を「氷床コア」と名付けている
③その氷床コアを装置が掴み、地上まで引き上げた後、排出する
という一連の流れを深さ5kmまで繰り返していくことを想定して設計仕様を考え、模型を製作しました。
「第31回衛星設計コンテスト」 最終審査会では福澤 慧さん、高橋 虎太郎さんの2名で発表を行いました。発表後、会場の審査員からはプロの研究者?技術者としての視点から、ヒーターの出力の設定や電力を何でまかなうのか等、具体的な質問が相次ぎ、実践的なアドバイスがなされました。
最終審査会における福澤 慧さん、高橋 虎太郎さんの発表は、以下の「第31回衛星設計コンテスト」 最終審査会Web ページにて動画でご覧になれます。
*福澤 慧さん、高橋 虎太郎さんの発表は開始 1時間15分20秒から1時間33分33秒まで
またエンケラドス氷床突破装置「Bagger」の詳細については、以下の「第31回衛星設計コンテスト受賞作品Web ページ」に掲載されている『解析書』をご覧ください。
http://www.satcon.jp/archive/list31.php
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