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大学卒業者の就職後3年以内の離職率は32.3%。企業における良好な人間関係の構築をめざしてゲーミフィケーション教材を開発。経営情報学科4年の白山さくらさん
金沢工業大学経営情報学科4年の白山さくら(シラヤマ サクラ)さんがプロジェクトデザインIII(卒業研究)の一環で、社会の問題をチームで解決していくための傾聴力とコミュニケーション能力を、ゲームを通じて楽しみながら高めるゲーミフィケーション教材「PSup」を開発しました。
※PSup:「Psychological Security(心理的安全性)up」の略です。
2023年12月21日(木)には、白山さんの内定先企業である株式会社クラスコ(石川県金沢市)が、同社の社員研修として「PSup」をワークショップ教材とした体験会を実験的に実施。白山さんは体験会の開始前と終了後に傾聴力とコミュニケーション能力に関するアンケートを行い、有効性について分析しました。
当研究成果は、2024年2月9日(金)に扇が丘キャンパスで行われる経営情報学科の「プロジェクトデザインIII公開発表審査会」で発表される予定です。
研究の背景
厚生労働省によると令和2年3月大学卒業者の就職後3年以内の離職率は32.3%で、前年度から0.8ポイント上昇しています。
※厚生労働省2023年10月20日公表「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html による
従業員の離職は、人材育成に関わる費用面での影響や人手不足に伴う生産性に関わる影響、企業イメージの悪化など、企業にとって不利益なことが多く、人材を「資本」とみなして投資し、人材の価値を引き出す「人的資本経営」が昨今、注目されています。
離職には職場環境や将来性、人間関係などさまざまな理由があげられる中で、白山さんは職場における「人間関係」について研究に取り組むことにしました。そして、良好な人間関係を築くための要素として、「傾聴力」と「コミュニケーション能力」、グループ内の「心理的安全性」に着目し、これらをゲームを通じて楽しみながら高められる教材を、大学生から社会人までをターゲットに開発し、効果の検証に取り組みました。
白山さんが開発したゲーミフィケーション教材「PSup」の概要
白山さんが開発したゲーミフィケーション教材「PSup」は、2人から5人のグループで遊びながら、さまざまな個性を知り、その個性を活かしながら社会に存在する問題をグループで解決していく、協力型の問題解決ゲームです。ゲームを通じた活発なコミュニケーションにより、「誰もが意見を言いやすい環境づくり」や「異なる価値観の受容」といった企業における良好な人間関係の構築をめざしています。
[ゲームのルール]
「ポジティブな言葉遣いを心掛ける」「人の意見を否定しない」「誰かが話していたら、最後まで話を聞く」「遊び感覚で楽しく取り組む」「制限時間以内に多くの星をGetしたグループの勝ち」
?参加者は「personalityカード」を1人1枚引く
personalityカードの例:
「マイペース。常に焦らず行動できる。集団で行動するのが苦手」
「愛情?人と仲良くするのが好き。しつこいと思われる時がある」
?みんなでお互いの個性を確認する
?「problemカード」をグループで1枚引く
problemカードの例:
「家庭の事情で、労働時間は伸ばせないが、生活費の確保のために月給を増やしたい」(星2つ)
「行動した人が、行動しない人から冷たい目で見られることがある」(星2つ)
?各自、自分が引いた個性を踏まえて「problemカード」に書かれた問題を解決できるような提案や話し合いをする
?1人が話したら、その意見をもとに「個性マップ」上に、発言者の「personalityカード」を置く(出された意見に対して「良い」と思ったら、発言者に「fanカード」を渡す)
?全員の発言をもって「problemカード」の解決とする
?解決した「problemカード」のすべての星と達成した「個別ルール」の星など、グループで獲得した星の数を数える。全員が個別ルールを達成した場合、更に星10個増えるといったボーナス付き。グループで決めたGOALを達成した場合、そのGOALの達成ポイントを足す(例えば星を10から15個集めるというレベル1のGOALの場合、達成ポイントは10)
※個別ルール
「誰かの個別ルールの手助けをする」(星1つ)、「全員にfanがつくようにする」(星2つ)、「3回以上メンバーの意見を褒める」(星3つ)、個性マップ上にある4つのマスすべてを埋める」(星4つ)、「みんなの個別ルールの手助けをする」(星5つ)があり、達成すると数字分だけ、星がゲットできる
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