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大学院生の加藤慎吾さんがアマモ場に関する研究で土木学会全国大会優秀講演者に選ばれる。「海のゆりかご」と呼ばれるアマモ場を生物多様性の観点から評価する研究で
大学院工学研究科環境土木工学専攻博士前期課程(修士課程)2年の加藤慎吾さん(有田研究室)が、9月11日から13日までの3日間、九州大学で開催された平成29年度土木学会全国大会第72回年次学術講演会において、「優秀講演者」に表彰されました。この講演会には、全国の産官学から、約5千名の土木工学に携わる技術者?研究者が集まり、3387編の講演がなされました。この内、40歳未満の講演者に対して厳正なる審査を行い、社会人を含む240名の優秀講演者が表彰対象に選ばれました。
加藤さんは、自生アマモ場に生息する生物群集構造の季節的変動特性に関して発表しました。
アマモは、海中に生息するイネ科の顕花植物(海中でも花を咲かせる)で、別名として「竜宮の乙姫の元結の切り外し(リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ)」というロマンチックで最も長い名前がつけられています。
アマモは水深3メートルより浅い海域に群落を形成して生息しこの群落のことをアマモ場と呼びます。石川県では能登島周辺の浅瀬に繁茂しています。
このアマモ場は日本全国で、高度経済成長期の埋め立て工事によって減少しました。しかし、アマモ場は「海のゆりかご」と呼ばれ沿岸域の海洋生物の産卵、生育の場所の機能や一時的な水質浄化機能があります。
このアマモ場の造成活動は地方自治体、NPO法人、一般企業などによって行われています。造成されたアマモ場は、その面積や株密度から評価されるのが一般的ですが、アマモ場の海洋環境での役割から考えると、そこに生息する多種の海洋生物の多様性の観点から造成アマモ場の事業評価を行うことが望ましいと考えられています。
しかし,アマモ場に生息する海洋生物の種数、個体数、生物相から多様性評価を検討した研究例はあまり多くありません。
加藤さんは学部4年から、造成されたアマモ場に生息する生物群衆の構造から生息する生物群集の多様性を評価することで造成アマモ場を生物多様性の観点から評価することに取り組んできました。今回の講演はその成果であり、丹念な準備に基づく発表に加え、会場からの多数の質疑に対して丁寧に応答したことが今回の受賞につながりました。
【講演題目】
「自生アマモ場に生息する生物群集構造の季節的変動特性の一例」加藤慎吾、有田守
【講演要旨】
自生するアマモ場に対して現在提案されている生物群集の多様性を評価する手法について手法の特性ごとに大きく5つに大別できることを示しました。その大別された5つの手法を自生アマモ場に生息する生物群集調査によって得られたデータに対して解析を行い手法の違いによる生物群集の多様性の評価を季節変動の観点から解析した一例を示しました。