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炭素繊維複合材料研究開発の世界的拠点「東海?北陸コンポジットハイウェイ」形成にむけ金沢工大、名古屋大、岐阜大が協定締結
金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)と名古屋大学 ナショナルコンポジットセンター(NCC)、岐阜大学 複合材料研究センター(GCC)はこのたび炭素繊維複合材料に関する連携協定を締結することとなり、11月12日(水)、名古屋大学にて調印式が行われました。
この連携協定の締結により、三大学は「東海?北陸コンポジットハイウェイ」の中核として、実用化研究で先行する欧州の研究センターに対抗できる一大研究開発拠点を担うことになります。
(写真は左からICC鵜澤センター所長、NCCの石川センター長、GCCの三宅センター長)
【今回の協定締結の意義】
炭素繊維複合材料は鉄の10倍の強度を有しながら重さは4分の1という、日本が生み出した先端材料です。世界の炭素繊維複合材料の7割は日本で生産され、供給されています。現在ではボーイング787で機体重量の50%で使用されるなど、私たちの身の回りで急速に普及しつつありますが、この炭素繊維複合材料を使って実際に製品化する技術は欧米が世界をリードしているのが現状となっています。
一方、炭素繊維材料を使った製品化は、現状では未だに「手作業」が中心で、産業革命以後、大量に生成されるようになった鉄に比べると、「江戸時代の鍛冶屋レベル」であると言われています。
金沢工業大学が立地する石川県は、ボーイング向けの炭素繊維の供給を東レが行うほか、繊維産業、機械産業に強みがあり、この強みを活かした炭素繊維複合材料の研究開発が県をあげて行われています。
2013年10月には、文部科学省が10年後のわが国を再び世界トップクラスにするために全国で12箇所採択した革新的イノベーション創出中核拠点に、金沢工業大学が私立大学で唯一選定され、金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)が、建築物や橋梁、長さ数kmもある海洋資源掘削用パイプや長大な洋上風力発電用のブレード(羽)などを炭素繊維複合材料で実現するため、まだ世界でも確立されていない炭素繊維複合材料の連続成形技術について研究開発を始め、新たな産業革命をめざしています。
一方、東海地区は自動車、航空産業におけるわが国の一大拠点となっており、名古屋大学、岐阜大学が中心となって、炭素繊維複合材料の応用研究が活発に行われています。
このたび、金沢工業大学、名古屋大学、岐阜大学における炭素繊維複合材料分野の研究開発センターが連携することで、北陸東海地区が研究開発から生産?加工?組立までを行う世界的な一大拠点となり、自動車?飛行機から、住宅インフラ、社会インフラ、海洋インフラにいたるまで、わが国の炭素繊維複合材料の社会実装が急速に進展することが期待されています。
【11月12日の「東海?北陸コンポジットハイウェイ構想」の記念式典?記念講演会】
11月12日(水)に名古屋大学豊田講堂において、金沢工業大学革新複合材料研究開発センター(ICC)と名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(NCC)、岐阜大学複合材料研究センター(GCC)との連携による「東海?北陸コンポジットハイウェイ構想」の記念式典?記念講演会が開催されました。
式典には、金沢工業大学学長、名古屋大学副総長、岐阜大学学長はもとより、石川県知事、愛知県知事、公設試験研究機関、文部科学省、経済産業省などの行政の担当者や、トヨタ自動車の内山田会長など産業界からも多数の出席があり、盛大に挙行されました。
式典では構想の中核となる3拠点であるICC?NCC?GCCによる連携協定の調印式も行われ、ICC鵜澤センター所長、NCCの石川センター長、GCCの三宅センター長が署名調印をしました。
今回の「東海?北陸連携コンポジットハイウェイ」は、炭素繊維複合材料における川上、川中(繊維産業?機械産業)の製造エリアである北陸地区と、多大なニーズや消費があり、実用化、製品化が見込まれる川中、川下(自動車や航空機産業)の東海エリアが連携し、一体化することで、炭素繊維複合材料の商品化や事業化をさらに前進させることを目的に構想されました。
日本の複合材産業は炭素繊維メーカーが世界市場で約7割のシェアを持つ一方、CFRPを用いた部材や製品のシェアは約1割と言われ、加工や利用で欧州に後れをとっています。同構想がスタートすることで、繊維?機械産業が盛んな北陸と、自動車?航空機産業が集積する東海との協力が密になり、材料開発から利用までカバーする複合材のサプライチェーンが構築されます。
記念講演会ではヨーロッパを代表する複合材料研究開発拠点の一つであるドイツのCFK Valley Stadeによる講演が行われました。CFK Valley Stadeは、ドイツ企業を中心として、炭素繊維複合材料(CFRP)の開発?応用?普及を目的に設立されたコンポジットクラスターで、炭素繊維複合材料における川中?川下の成形?加工分野から商品化や実用化(エアバス社、フォルクスワーゲン向け)が先行している欧州では、研究開発拠点が産学官の交流の基盤となり、生産から商品化?実用化までが一体となって複合材料の研究が行われていることが紹介されました。
記念式典?記念講演会の閉会の挨拶で金沢工業大学石川学長は「研究者などの【人】そしてシーズ?ニーズの【情報】が行き交う連携や交流、さらには研究開発や人材育成の一層の加速化をはかり、まさしく【コンポジットハイウェイ】として本構想を強力に推進していきたい。来年はICCが位置する北陸の地でシーズ?ニーズ発表会を開催したい」と決意を述べました。
【ドイツCFK Valley StadeがICCを訪問】
「東海?北陸連携コンポジットハイウェイ構想」協定締結に先立ち、11月10日(月)、CFK Valley Stade一行9名が金沢工業大学やつかほリサーチキャンパスの革新複合材料研究開発センター(ICC)を訪問しました。
川中、川下における研究開発で先行するCFK Valley(独)やEMC2(仏)、Fraunhofer(独)、NATIONAL CONPOSITES CENTRE(英)などの欧州の研究機関と、川上に強みを持ち、航空機や自動車、社会インフラにおける商品化を目指す「東海?北陸コンポジットハイウェイ」との国際交流も今後計画されており、世界における炭素繊維複合材料の普及に拍車がかかるものと期待されています。
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