- 虎ノ門大学院ブログ
- 2024年01月30日
イベント開催レポート:『社会人大学院で学ぶリーダーシップの新常識! ~VUCA時代に求められる組織のリーダーを目指して~』
変化の激しいVUCA時代において、リーダーシップの重要性が改めて注目されています。組織のリーダーとして、どのようにマネジメントを実践していくか?そうした問いを持っているビジネスパーソンは多数いらっしゃいます。
そこで、KIT虎ノ門大学院では、リーダーシップ関連科目を担当する人気講師3名による講演とパネルディスカッションからなるイベント『社会人大学院で学ぶリーダーシップの新常識! ~VUCA時代に求められる組織のリーダーを目指して~』を開催しました。1月17日(水)という平日夜の開催でしたが、30名を超えるビジネスパーソンにご参加いただきました。
1人目の講演は、「リーダーシップ特論」を担当する荒木博行客員教授。住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て、株式会社学びデザインを設立。スタートアップの支援や武蔵野大学での起業家育成などにも取り組んでおられます。
テーマは「失敗から学べるリーダーシップ」です。
この日は具体的な事例として、Netflixの「Qwikster」プロジェクトの失敗を取り上げました。荒木先生の著書である『世界「失敗」製品図鑑』にも掲載されているこの事例。大きな失敗でしたが、Netflixはそこから学ぶことで、プライシング戦略の見直しや、反対意見を受け入れるプロセスの重要性など、その後のビジネス戦略や組織文化に大きな影響を与える学びを獲得したそうです。
このように失敗や成功からの洞察を言語化し、学ぶことが本質的成長に繋がると荒木先生は指摘します。言い換えると、「学び」とは「経験後の自分の状態ー経験前の自分の状態」という公式で表現できるとのこと。実際のクラスでは、他の実践的な事例や受講生の経験を基に、リーダーシップの理解をより深めていくとのことです。
短い時間でしたが、困難な状況からいかに学べるかがリーダーには重要であることが心に刻まれた時間でした。
2人目の講演は、「フォロワーシップ?リーダーシップ特論」を担当する伊藤俊幸教授。海上自衛隊での34年間の経験を経て、安全保障の分野でテレビやオンライン三亚赌场,香港赌场に解説者として登場する一方で、8年前から当大学院でリーダーシップやリスクマネジメントに関する講義を担当しています。さらには、企業の社外役員や顧問としても活躍中です。
この日は、ミリタリー組織におけるリーダーシップスタイルを紹介しながら、日本の企業におけるリーダーの役割について掘り下げました。
多くの企業で、具体的な意図や背景を共有せずに行動のみを指示するという指揮スタイルが依然として一般的です。しかし、軍隊においては、上位の指導者が直接的に号令をかけることは少なく、ナンバー2以下の幹部が提案し、その提案に基づいてトップが判断を下すスタイルが一般的です。このリーダーシップスタイルは、特に不確実性や複雑性が特徴のVUCAの時代に適応力を発揮します。伊藤先生は、このような変動する環境下でリーダーに求められる役割と意識すべきポイントについて、具体的なフレームワークを交えて解説しました。
VUCAの時代だからこそ求められるリーダーの役割について、改めて考えさせられる時間でした。
3人目の講演は、「スロー?リーダーシップ特論」を担当する野村恭彦教授。企業、行政、NGOといった異なるセクター間の対話と協力を促進し、社会課題解決型のイノベーションを長年支援してきた経験をバックグラウンドに、2019年にスローイノベーション株式会社を設立。持続可能な未来に向けて、短期的な成果に囚われず、根本的な価値や社会的な意味をじっくり見極めるスローなイノベーションの促進に取り組んでいます。
なぜ「スロー」なのでしょうか。答えが見つからない時代においては、①ゴールを示し、②人を巻き込み、③影響を与え、効率的に結果を出す一般的な(ファストな)リーダーシップには限界があると、野村先生は問題提起しています。
これに対し、スロー?リーダーシップでは、①心の中に旗を立て、②関係者全員の想いを聴ききり、③セクターを超えてともに変わることを目指しています。旗を立てるというのは、「ゴールを示す」ことではなく、「自分の信じていること」を大切にすることです。そして、話すことよりも、聴くことがリーダーシップであると野村先生は強調しています。
社会的な価値の創造だけに焦点を当てるのではなく、個人の成長が共進化するプロセスが持続可能な未来につながるという野村先生の指摘に、ハッとさせられる時間でした。
最後には、毎年1学期に開講している基礎科目「リーダーシップ要論」を担当する石井大貴准教授の進行のもと、パネルディスカッションを実施しました。「リーダーシップ」についての多様な視点を提示する3人の先生のやり取りは、大変刺激的で、ここまでの学びを更に深掘りするとともに、新たな問いが生まれる時間でした。
おかげさまで、参加者アンケート※の評価も高く、「面白かった」と答えた方が100%、「集中できた」と答えた方が83%、「役に立ちそう」と答えた方が92%というフィードバックをいただきました。以下に、参加者の皆さまから寄せられたコメントを一部抜粋してご紹介します。※回答数:12件
「講師の皆さんそれぞれのお話から共通するものを感じることができました。明日から勇気を持って行動していきたいです」
「先生皆様の講演を聞いて、リーダーシップを自分アレンジでものにしてみたくなりました。本日はありがとうございました」
「それぞれの先生方の観点や言葉、表現は違っても、リーダーシップに対する根本的な考え方は同じであるということが分かった。自分でもできるかもしれないという気持ちになりました」
「伊藤先生のお話にもあった軍隊のマネジメントやリーダーシップも、今日初めて知ったのですが、同様に軍隊組織の変遷や戦争自体の戦略戦術的な変化と合わせて変化してきた結果なのだろうと思いました。みなさんありがとうございました」
「野村さんが説いていらっしゃるスローリーダーシップについて直接お話をお聴きしたくて参加しました。 野村さんのお話も、荒木さん、伊藤さんのお話もとても興味深く、自分なりのリーダーシップ、チームメンバーそれぞれのリーダーシップを見出せるように、自分たちを見つめてみます。今とても興味のある問いの力の大切さも感じられて、とても楽しい時間でした!」
「自分自身のリーダーシップについてヒントを沢山いただきました。ありがとうございました」
「4人の先生方それぞれに、ご経験に基づいた視点でのアプローチがユニークで面白かったです」
KIT虎ノ門大学院では、今後もこうしたイベントを開催してまいります。そして、こうしたテーマの学びをもっと深めたいという方は、ぜひ本学への進学、もしくは1科目から学べる科目等履修生での受講をご検討ください。