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虎ノ門大学院ブログ
2018年11月20日

KIT修了生インタビュー:井上さつきさん(東証一部ITベンチャー)
「特許って何?派遣社員からスタートした知財の仕事」

井上さつきさんは茨城県 水海道生まれ つくば育ちの34歳。都内のIT会社勤務。地元大好き、Jリーグの鹿島アントラーズが大好き。家族とも仲が良く、「一番尊敬している人は父です」と笑顔をみせます。最近では、虎ノ門キャンパスで共に学んだ修了生仲間と二泊三日の金沢旅行に出掛け、北陸グルメを堪能したとのことです。

(※ お名前は本人のご希望により仮名を使っています)


■ 派遣会社の紹介で特許事務所に


- 井上さんが知財に関心を持つようになった経緯は?


すみません、知財自体にそれほど興味ないです。弁理士になりたいとも全然思わない。大学卒業後は、仕事上の夢や目標も特にありませんでした。

- でも、大学を出てすぐ特許事務所に勤めた、と聞きましたが。


単なる偶然です。茨城を離れたくなかったので、最初は、地元の学習塾に就職しました。でもハラスメントがひどく、すぐやめて、それから派遣会社に登録して、紹介されたのが地元の特許事務所でした。所員数100人、なんでもバイオの分野で有名な事務所ということでした。

そのときは「特許って何?」という無知の状態でした。一般事務を希望しましたが、なぜか事務所から「特許事務をやってくれ。それなら次の更新時には正社員登用」と頼まれたので、ヘンなの、と思いながらも派遣会社と相談して、そうしました。特に仕事内容にこだわりはなかったので。

特許事務は、弁理士のサポートが主な仕事です。出願の事前調査をしたり、英文でメールを書いたり。そうして働く中で、ふうん、特許出願ってこういう風にするのかとイメージをつかみました。

そこに2年半勤めましたが、目の病気にかかって退職。静養した後、これも派遣会社の紹介で、地元にある、大手食品会社A社の知財部門に勤めることになりました。

■ 「仕事への欲」の芽生え


- その頃は、知財にどんなイメージがありましたか?


うーん、「仕事のひとつ」という感じでした。でもA社では知財部門が人手不足だったらしく、勤めて3ヶ月くらい経ったころ、「正社員を目指さないか」と言われたので、そうしました。私の仕事は、研究開発部門、営業部門、企画部門、特許事務所をつなぐ「橋渡し役」のようなものでした。

ここで、ついに「仕事への欲」みたいなものが芽生えてきました。なんかこう、「一生懸命な研究者を助けたい…」、みたいな。

A社では私の職場と同じ棟に研究所がありました。研究開発の人は、いつも忙しそうで、なのに営業や企画から強く言われていじめられていて、何だか大変そうでした(知財部門は「橋渡し役」なので、そういうことが分かるんです)。

私、大学は文系で、仕事も事務職ばかり。だから「モノづくり」している研究所の人に憧れもあって気持ちが移っちゃって、「この人たちをキラキラさせたい!」と思うようになりました。

研究所には技術がある。職場の近くには国の研究機関や大学もある。営業は小売の情報を持っている。企画にはアイディアがある。だったら橋渡し役である知財部門の私が部門と部門をつなぐ情報ハブになって、みんなが楽しく仕事できる環境を作りたい、と思ったんです。

■ 周囲に相手にされなかったので、社会人大学院へ


- そのあと、どんな行動を取ったのですか?


とりあえず上司や同僚に話してみました。でも、「は? 何考えてるの? 」と見事に相手にされませんでした(笑)。

次は、食品業界の勉強会に参加してみました。食品会社は互いに仲が良いらしく、会社を横断する勉強会が盛んだったのです。そこに行って考えを伝えてみましたが、やっぱり話が通じませんでした。

何かこう、「知財の仕事は専門業務!」「オレたちの仕事はオレたちにしかできない!」みたいなプライド、思い込みが強くて、外の世界に関心を持とうとしない姿勢でした。それじゃ楽しくないなぁと私なんかは思うんですけど。

社内も同業他社もダメ。だったら他業界に目を向けるしかない。だったら社会人大学院? 急に外の世界に興味が出てきました。

とりあえず「知財 社会人大学院」などテキトーな言葉でネット検索しました。そして見つけたのがKITです。ひととおり案内を読んだあと、すぐに電話して虎ノ門に行って話を聞きました(説明会とかめんどくさかったので)。

話を聞いて、すっかり通いたくなりました。でも当時は地元暮らし。虎ノ門にはちょっと通えないな~と。

なんて思っていたらA社の知財部門が茨城から東京本社に移転することになりました。私も東京に転勤です。ラッキー、通える!これはもう天の引き寄せ!と舞い上がって、入学を決意しました。



■ KITの感想


- KITに入学して、いかがでしたか?


今まで誰にも相手にされなかった話が、KITでは「普通に」受け止めてもらえました。先生も、同期の仲間も「なるほどね」と話を聞いてくれます。私の考え、おかしくなかったんだと分かりました。

講義で「体系的に」学べたことも楽しかったです。今まで、知財の知識はぜんぶ、見よう見まねの実務で覚えていました。それが講義を通じて、なぜ、そこでそうするのか、それが全体にとって何の意味があるのか、パズルを解くように、すべてがつながっていきます。すごく楽しい体験でした。

でもA社では、法務部門に異動になっちゃって…。食品会社の法務って朝から晩まで「契約書のチェック」なんです。正直、もの足りなかった。ちゃんと学びが活かせる仕事がしたいと思い、転職活動をはじめました。

アパレル会社の内定を一つ取りました。でも役員面接のとき、何故か「アパレルに知財など無意味!」とさんざんに言われて、なぜ知財の採用をしようとしてるのにそんな発言?なんかめんどくさそう、と思い内定を断りました。どうも私、ヘンな面接ばっかりですね(笑)。

そして見つけたのが、いま勤めている一部上場のITベンチャーです。ここの面接もヘンでしたけど。

■ ふしぎな面接


- どんな面接だったのですか?


最初、「気軽に来てください」と言われたのでホントに気軽に行ったら、実は、がっつり一次面接でした。でもその日の夜に、「合格です。二次面接に進んでください」と連絡がありました。

二次面接の相手は管理部の役員でした。管理の部門長なのにTシャツ、Gパンの、サーファーみたいな格好の人で、意外でした。役員からは、「もし入社したら何がしたい?」「この会社をどうしたい?」と聞かれました。たぶん自走型の人材かどうか、チェックしたのだと思います。

面接を終えると同時に「合格です」と告げられました。ただ、その役員からは「次の社長面接は難関です。落とされる人の方が多いです」と言われました。

そして社長面接の当日。社長はびしっとしたスーツ姿でした(入社後聞いたら、その日は外出の予定があってたまたまスーツだったらしいです(笑))。「静かな圧、オーラ」を感じさせる人で、リラックスはできませんでした。面接は意外に短く20分で終了。なぜか合格できました。社長が何を基準に採用したのか、今でも分かりません。

■ 動きが激しい業界での知財部門


- いまの会社の仕事はいかがですか。


ベンチャーなので1人で何でもやります。法務でも知財でも「会社のリスク管理」に関わることは、すべて私の仕事です。

IT業界は新しい技術やサービスが次々と生まれる。AIとか身近なところだと動画配信サービスとかもそうですよね。これは知財リスクが「事前に読みにくい」ことを意味します。知財リスクとは、「オレの財産を勝手に使うな(使うならカネ払え)」と文句を言われることです。しかしITの世界では、このリスクがどういう形で顕在化するか分かりません。これが変化の激しい業界で知財に関わる大変さであり、またやりがいでもあります。

あと、知財って、単なるビジネスツールです。「守り」といわれるリスク管理の面が注目されがちなんですけど、それだけじゃなくて、事業を優位に進めるっていう「攻め」の側面もあるんです。この両面をどう活かすか考えながら仕事を進めていくことは楽しい。知財自体には興味ないけど、攻めと守り、両方の使い方ができるから飽きないんですよね(笑)。

■ KITでの学びが役立ったこと


- KITで学んだことは今の職場で役立っていますか。


すごく役立っています。特に人脈、ネットワーク。

いわゆるベンチャー企業なので、人の入れ替わりは頻繁です。私の部に「社歴の長い先輩」はいません。そこで未知のことが起きたとき、まずKITの同期生に相談します。今まで何度も問題が解決できました。この他、信頼できる外注会社が必要なときも、やはり同期生のツテをたどります。

こうした形で外部ブレーンを持っていることは、会社からも評価されます。KITのネットワークを生かして、この会社でもっと良い仕事がしたいです!

■ 目標は別になくても…


- いまKITへの入学を考えている人向けに、「修了生からのメッセージ」などあればお願いします。


私は「知財ひと筋」とか「絶対、弁理士!」という志向は全くないです。でも、仕事は楽しい。それでいいかなという気がします。だから、いま特に目標がない人も、あまり気にしなくていいと思います。

※ 取材日時 2018年10月
※ 取材制作:カスタマワイズ

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