15世紀半ばのフィレンツェに生まれたレオナルド?ダ?ヴィンチは、画家として、今日の世界で誰よりもあまねく名を知られる存在でしょう。しかし彼の探究と創造は、絵画の領域だけに留まるものではありません。レオナルドもまた、「世界とは何か」という根源的な問いに駆り立てられ、現代であれば音楽、建築、幾何学、光学、解剖学、流体力学、航空工学と分類されるような、多彩な領域へと関心を広げていきました。
その詳細に分け入るための手がかりとなるのが、各地に分蔵される手稿類です。絵画や彫刻として完成に至るまでの、生々しい試行錯誤の痕跡を留めた「ノート」。そこに混沌として散らばる無数の思索の断片は、わずかに現存する完成作品に結びつくものもあれば、行方のわからないものもあります。
特別展示「手稿の中の宇宙 レオナルド?ダ?ヴィンチを旅する」では、金沢工業大学図書館が所蔵する『パリ手稿』『アトランティコ手稿』のレプリカを用い、世界を変える問いはどのように生まれるのか、探究の過程で問いそのものが、そして問う者自身がいかに変容するのかを、インスタレーションとレプリカの展示によって検証します。「世界を変える」とは自らが変わることでもあるのだと、実感いただけるでしょう。
ダヴィンチ展メインビジュアル
レオナルド?ダ?ヴィンチ『パリ手稿』(複製版)、
1988–1991年、ジュンティ社?岩波書店