地上型レーザの基本特性に関するワーキンググループ
レーザに関する基礎的な特性を検討する研究活動を行っています。
レーザースキャナによる点群の基礎的な判読性に関する検討
本活動では、地上型レーザースキャナ(Leica BLK360)を用いて器械から相対的な位置に設置した標識を対象として設定条件などを変化させて取得した点群の判読性に関する基礎的な検討を行った。図1に示す金沢工業大学の測量器材庫内をフィールドに用いた。判読性に対する検証用の標識は、素材に白地と黒地のプラスチック段ボールを用いて直径0.10m の円形をくり抜いてお互いに嵌め込みなおして作成した白黒4セットの円形標識を用意した。これらの円形標識を器械高1.200m のBLK360から水平距離で約2.5m、4.2m、5.5m、7.0m に設置した。点群の取得は、計測条件の低密度?中密度?高密度に対して反射強度とHDR(High Dynamic Range)画像の設定を組み合わせた6ケースで実施した。図2に高密度の設定による反射強度で表現した点群を示す。


判読性を評価するために図2に示した高密度点群から標識の周囲を抽出した点群と標識番号を図3に示す。図3から高密度点群ではT1とT3の黒枠がほぼ欠測となり、T2の黒丸も欠測から奥が透けている。いっぽう、T5の白丸の上部付近も欠測が確認できる。その他の標識では、反射強度の変化が認められるものの標識の全体の点群が取得された。既往の研究のBlaskow らによると白黒パターンの明度に対する反射強度と測距のばらつきにおいて明度の低い黒の計測個所は明度の高い白の箇所に比べて2倍のばらつきがあった報告を踏まえて各標識を図4のように断面で表現して点群のばらつきを定性的に確認した。標識は若干の傾斜があるため、標識の点群に対して平面を近似して、その平面を用いた断面を図4に示した。なお、図4の上側が器械側となるように軸を設定した。図4より、既往の報告と合致して白色に対して黒色、すなわち反射強度の弱い点群のばらつきが大きいことが認められる。特にT4の黒丸やT5の黒枠のばらつきは顕著であり、相対的ではあるものの黒色部の点が器械側に分布している。標識の色の違いによる点のばらつきを定量的に評価するため、標識の平面に対する奥行き方向の標準偏差について円形の内側と外側を区分して算出した結果を図5に示す。



図5では中心から0.05m 以内の点を内側として扱い、中心から0.10m 以内の点から内側を除いて外側とした。T4では白枠の±0.002m に対して黒丸が±0.008m となり、4倍の標準偏差を示した。標識番号の奇数が黒枠、偶数が白枠であるが、欠測などによって標本数が不均一であることも含めて、すべての標識における標準偏差の傾向は同一とならなかった。
地上型レーザースキャナによる点群の基礎的な判読性を検討するため、器械から距離を変化させて設置した白黒の円形標識に対して計測条件を変えて取得した点群を用いて定性的および定量的に評価した。その結果、既往の報告にある地物の明度の違いを持つ標識では、黒色の点のばらつきが大きく、条件によっては白色の4倍の奥行き方向のばらつきを確認した。また,近距離の約2.5m では黒色部が欠測したことや場合によっては約4.2m にある白色部でも欠測した。ここでは反射強度の変化に注目しなかったが、レーザーの受光部におけるダイナミックレンジに関わる影響が想像され、今後も検討を継続したい。
Blaskow, R., Lindstaedt, M., Schneider, D., Kersten, T., Untersuchungen zum Genauigkeitspotential desterrestrischen Laserscanners Leica BLK 360. Photogrammetrie, Laserscanning, Optische 3DMesstechnik- Beitr?ge der Oldenburger 3D-Tage 2018, pp.284-296.